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ICT大好きな中小企業診断士のブログです

【書評】デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門(著者:長尾一洋、KADOKAWA)

中小企業のDXについて、筆者の考え方を紹介しています。文中に特定の製品名が目につくと、その製品を売り込むための宣伝目的の書籍かと警戒してしまうのですが、中立的に筆者の考えが述べられていて、安心して読むことができました。

筆者によると、デジタルの本質は限界費用のゼロ化とのこと。本書の主張はこの点に集約されます。この特徴を活かせば、例えば営業を効率的に行うことが可能になります。ホームページ・SNS・動画配信・メルマガなどデジタル技術をうまく活用すれば、飛び込み営業やテレアポのようなアナログ的な営業手法に比べて見込み客との接点を広げることができるはずです。とは言え、玉石混淆のネットでは自社の情報発信が埋没しがちなのも事実です。デジタル技術で引き寄せた見込み客に対して、アナログ的な手法で背中を押す、デジタルとアナログのハイブリット的な営業が効果的でしょう。

このようにDXは従来の業務プロセスを変革し、生産性を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。しかし一方で、中小企業にはDX推進人材の不足という問題があります。この点に関しては、大企業のようにDX人材を育成したり外部から確保するのではなく、社内の普通の社員がノーコードツールを使ってDXを実践すべきというのが筆者の主張です。ノーコードツールならプログラミングのスキルがなくとも業務システムや業務アプリを作成できるので、業務改善に意欲を持った当事者意識の高い人材に任せれば、業務プロセスのアジャイル的な改善につながります。

また、DXにはデータ入力が不可欠です。電帳法対応のためにも、効率的なデータ入力が必要な時代となりました。この点に関して筆者は、一人一人の社員が各自でデータを入力するような業務プロセスへの変革を勧めています。確かに、特定の社員だけにDX化の負荷が集中するようでは、DX化に反発されることもあるでしょうし、草の根的に全員がワンチームでDX推進した方が分散処理による高速化が図れます。

本書では、テレワークを成功させるための秘訣や、テレワークによって可能となった外部人材の活用についても解説しており、人材不足に悩む中小企業に役立つ内容となっています。